本当に「下妻」であった怖い話(4)
私は転職して今の会社を始めましたが、おかげさまの未曾有の不況で働いても働いても会社がまだ安定しません。社員は労働基準法の適用があるので、夜遅くまで食い込むような業務では、やはりそうそう働いてもらうわけに行きません。その点、役員は「労働者」ではないので、その枠に入りません。つまり自分自身が最も安くハードに使える人的リソースな訳です。
その日は、いつものように朝5時に出勤して、夜12時すぎに帰宅というコースでした。毎日のことなのでかなり疲れていたのも確かですが、以下書くことは幻覚や夢ではありません。私は、会社がつくばにあるので毎日、125号線のバイパスのアンダーパスを通って常総線の踏み切りを越え、新堀から加養を通って千代川から吉沼に抜け、つくば市の中心地区まで行きます。帰宅も同じコースです。
かなり疲れがたまっていたのも事実ですが、その日はなんとなくドンヨリと曇った空と、なんだか暗い心持で運転をしていました。帰宅に向けて何も考えずほとんど惰性で運転していました。そしてとっくに終電が終わった常総線の踏み切りを渡りT字路を右折しようとしたとき「ソレ」がいました。
実はこのT字路、帰宅時は右折するのですが、いつも右折するタイミングで左側のバックミラーに何かが写っているんです(笑)。それが判っているので毎日左側のバックミラーは極力見ないようにしているんですが、この日は違いました。逆のT字路の右側の角に何かの気配を感じてフっと視線をやると・・・そこには黒い山高帽に黒いのっぺらぼうというか黒いモヤで隠れたような顔、黒いスーツを着た細い体型のマネキン人形のようなモノが、その細く黒い腕で何かを抱きかかえるような感じで立っていました。それも全く微動だにせずに。
惰性で機械的にそのまま左から車が来ない事を確認するため一旦左に目線を移したのですが、瞬間的に「え?」と思い、右側に視線を戻しました。が、既に消えていました。なんといいますか、まるで捨てられたマネキン人形のように見えたので、それがまたそこにあったならば、全然気にもとめなかったと思いますが、消えていた事で「あれはなに?」と思いました。その瞬間!ゾゾーっとえもいわれぬ悪寒が背中をつきあがってきて、体中がブルブル震え始めました。
過去にも何度か変なモノを見た事はあるんですが、これほど悪意とか憎悪とか黒い類のものを感じたのは初めてでした。家につくまでずっと悪寒がとまりませんでした。さすがに実家は寺院ですから、山門(が本来あるべき場所)から中ではそういった感じは消えましたが、感覚で「今回のはヤバイ」と思いました。深夜にも関わらず、線香をもって歴代住職と親族の墓にお参りしました。翌日も朝一番から実家に行き仏壇に香を手向け、子供達が起きてくる前に神棚の水や酒も代えました。
あれがなんだったのか、わかりませんが、あれはヤバイです。今これを書いていても寒気がします。今後も真っ黒なマネキンのようなものを見た時は必ず禊ぎやお祓いをしたほうが良いなあ。
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