近くにいた村人たちが、すぐに鹿を取りおさえたのですが、かなりの深手をおっており、まもなく死んでしまいました。
するとそこへとなり村の人たちがやって来て、「その鹿は、おれたちがつかまえようとしてここまで追ってきたんだ。さあ、こっちへわたしてもらおうか。」と、寄りつめました。ところが、山尻の村人たちも「いや、この鹿はここでおれたちがつかまえたものだから、お前たちには絶対にわたせない。」とゆずらず、とうとうけんかになってしまったのです。
そこで、村の名主がでてきて、仲裁(チュウサイ)に入り、「むかしから、鹿は鹿島神社のお使いというではないか。鹿がこの境内(ケイダイ)まで逃げてきたのは、ここにほうむってもらいたかったからにちがいない。そうは思わないか。」と言って、それぞれの村人達をなっとくさせ、けんかをやめさせました。
鹿は、境内の天満宮(テンマングウ)のすみに手厚くほうむられ、「お鹿様」として祭られました。
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