ヤンキー君とローカル君

 読む前に、予備知識として、現在DVD好評レンタル中の「下妻物語」を観て下さい。
 もしくは、オフィシャルサイトを参照してくださいね。

1.ロケ地について

 下妻物語が話題になってからというもの、観光客が増えた。彼らは街の住民を捕まえては口々に同じことを聞くという。

 「すいませーん、フカキョンが撮影に使った『貴族の森』って、どう行くんですか?」

 彼らは知らないのだ!下妻物語で撮影に使われた場所は、下妻駅からは滅茶苦茶遠いのである。フカキョン演ずる桃子が駅まで30分以上歩くというのはフィクションでなく本当である。

 そもそもチバラギ文化圏はモータリゼーションの国である。ここの住民は基本的に18歳になると普通自動車免許を取得し、一人一台車を購入する。いや、18歳以上65歳以下で「自分の車」を所有していない比率は限りなく0に等しい。

 そして、車とはまさしくその本人のアイデンティティの象徴であり、車で財力・知力・人格までもが判断されてしまう。
 例示してみよう。いくらキムタクばりの色男でも、乗っている車が「HONDA TODAY 初期型」だったとしよう。これでは、「ぼくちん、お金もセンスもありましぇーん」と言わんばかりで、全くギャルに相手にされない。
 しかし見よ!たとえルックスはジミー大西並でも「TOYOTA セルシオ 新型」や「日産シーマ 新型」で社外品の18インチアルミホイールを装着したものにさえ乗っていれば、「うちは屋根つき駐車場もあるし、地主だし」との押し出しが強くなり、ギャルのたむろしているコンビニに乗りつけ「乗っけ?」と言うだけで、それはもう入れ食い状態なのである。

 さらに、道路事情が決定的に違う。下妻付近の道路は、夜間になると全て「高速道路」と化す。そもそも昼間でも60km以下で走行している車はほとんどいない。東京のように「こすった、さすった」の事故は限りなく少なく、「生きてた、死んでた」の事故ばかり起きる。撮影に使われた国道125号線(ジモティーはワン・ツー・ファイブと呼ぶ)などは、そのメッカである。

 昔、私の家に遊びにきた先輩が言っていた言葉を思い出す。
 「お前ら、あんな真っ暗な道を、よくもあんなスピードで走れるな」
 いやいや、真っ暗な道だし周りに障害物が少ないからこそ、対向車や自転車を2km前から確認することができるので、ぶっ飛ばせるのだ。
 ただし、夏の八千代町の農道はメロンやスイカに群がるショウジョウバエが、それはもう雨のごとくヘッドライトに寄せられてくるので、翌日の掃除が大変だが。

 大体、下妻の人間は趣味や健康のために敢えてそうしている人々を除き、まず歩かない。200m先のコンビニに行くのですら車である。いや、うちの嫁などは徒歩3分の娘の幼稚園の送り迎えですら車である。まさにドア・トゥ・ドアの生活である。
 私も自宅にビルトインしてある駐車場で愛車アルテッツアに身を滑らせた後、好きなロックを大音量でかけながら快適なクルージングを楽しみ、25km離れた職場の駐車場まで30分弱で通勤している。職場の駐車場は建物の隣なので10歩も歩けばオフィスである。よって通勤で歩くのは20歩弱というところだ。
 東京に住んでいたころ、一番近い駅まで15分も歩くのが当たり前の生活だったことを思うと、大変楽である。

 大体車好きを自称しながら東京に住んでいる人間はおかしい。フェラーリを所有していても、あの渋滞では全くそのポテンシャルを生かしきれない。是非茨城に住んで欲しいものだ。12気筒エンジンの響きを聞きながら快適なクルージングが出来るはずだ。しかもつくば市に居住していれば、東京並のアーバンライフと茨城並の交通事情の双方を一挙に取得できるぞ!

 そんなところだから、飲み屋もほとんどが駐車場完備である(笑)。駐車場の無い店は、たとえ玩具屋であろうと栄えることはできないとまで断言しておく。

 おっと話を戻そう。観光客に尋ねられる駅前付近の住民は皆こう問うはずだ。
 「歩いていくの?」
 ここで
 「ええ」
 などと言ったが最後、その住民は三歩あとづさりをしつつ、ひきつった笑いを浮かべながら
 「まじで?」
 と言うに違いないのだ。

 ところで、フカキョンは何故徒歩なのだろう?小学生でさえ自転車を利用すのが通常なのに。ファッション云々以前に、若いお姉さんがヨコネから徒歩で下妻駅に来る自体”異常”だと思うが。

 あ、下妻にはレンタサイクルは無いのであしからず。

 そもそも”郊外型”巨大店舗のJUSCOがあるぐらいなのだから、そこは”郊外”なのである。郊外とは中心街区から離れた田園地帯などにある町をさす言葉である。一応下妻は、水戸、土浦、下館、結城、古河と並ぶ茨城有数の歴史都市なのであるからして、その中心にある下妻駅は「郊外」ではなく「中心街区」なのである。

 「貴族の森」に徒歩で行くのは、よほど気骨のあるファンは別として普通の体力の人は辞めたほうが良い。素直に駅の向かいにあるタクシー屋さんにお願いするのが無難である。タクシーにはすぐ乗れるはずだ。
 ちなみに下妻のタクシーは通常電話で配車をお願いする。つまりハイヤーなのである。よって、東京のような「流し」は無いので注意が必要である。目的地に着いた喜びでお金を払って返してしまうと、駅に戻れなくなってしまう。よってタクシー会社の電話番号をメモっておくか、「1時間後に迎えに来て」などの約束をするのが無難である。

 バス?あはははは、通学時間帯以外は各地に向かうバス本数は数時間に数本のレベルだし、うっかりすると半日で一本という場合もあるのでビジターには全くお勧めできない。大人は一人一台自家用車を保有し、高校生でもかなりの割合でバイク免許を持っている土地柄であるので、バスは利用者が非常に少ないことを忘れてはいけない。

 フカキョンが撮影を行ったヨコネ・ホリゴメ地区は、近年国道294号線のバイパスが通ったばかりの地区で、それまでは見渡す限りどこまでも田んぼという典型的な田園地帯であった。このあたりは昔「騰波ノ大海」と呼ばれた「大宝沼」であったところで、湖底であった場所だけに土地も肥沃である。撮影に使われた「騰波ノ江駅」もその昔は、大宝沼の”渡し”があったところである。そんな予備知識を持っていると、何もない田んぼも違って見えるかもしれない。

 撮影場所は何故か下妻駅からはるか東方に固まっているが、駅から比較的近い下妻ニ高でも行われたようだ。ニ高までなら徒歩10分程度なので、歩きになれた都会人なら楽勝である。だから冒頭の台詞を「貴族の森」から「下妻ニ高」に差し替えるだけで住民の反応が良くなることは請け合いだ。きっと
 「ああ、じゃあこの道を〜」
 と軽やかに説明してくれるに違いない。

 ちなみに下妻二高の横にある歩道橋が観光名所になるなんて、まさに青天の霹靂である。

2.牛について

 38年間(うち5年は東京だが)下妻住民だが、郊外でも牛がのこのこ歩いているのは見たことが無い。フィクション部分とノンフィクション部分はちゃんと把握してきて欲しいものだ。
 「すいません、下妻名物の牛はどこ?」
 と聞かれても、こちらが飼っている家を知りたいぐらいである。

 余談だが下妻市は「豚」の出荷が日本一である。しかし市内で養豚業を営む人はかなり少ない。単純に「トサツバ」が2箇所あるため下妻で処理を行う事が結果として出荷数になるらしい。「トサツバ」に運ばれてくる豚や牛はほとんど近隣市町村からの持ち込みらしい。(注:トサツバは単語がショッキングなので敢えてカタカナ表記にしてあります)

3.ヤンキーについて

 下妻市内を夜間爆走している方々は、ほとんど八千代町、関城町、千代川村、石下町、明野町という近隣町村の大農家のご子息達である。
 元々城下町であったがため武士や職人の末裔ばかりで、教師・営業・技術職やサラリーマンの多い下妻中心地区にはほとんど居住していない。

 ご存知ないかもしれないが、家がお金持ちじゃないとヤンキーはできない。しかも固定資産が多い人。
 「どんなに馬鹿やっていても、最終的に先祖代々守り続けてきた農家を継いでくれれば・・・」
 という土地持ち農家の苦渋がそのような生活を許すのである。
 営業の場合「あそこの坊ちゃんは」などと噂されると商売あがったりだし、サラリーマンはふざけていると職につけず明日の飯の食い上げになってしまう。
 したがって、下妻市内には信条ヤンキーは密かに存在するかもしれないが、真性ヤンキーは少ない。

 ヤンキーかどうかの判断ポイントは
 ・YAZAWAが好きか(定番)
 ・修学旅行に行ったか(真性ヤンキーは行かない・・・らしい)
 ・BOOWYが好きか(定番)
 ・Vシネマが好きか(定番)
 ・金のネックレスをしていないか(定番)
 などなど。
 ちなみに、イチゴのようなスクーターは、県南の方で良くみかける。下妻付近は400ccが多い(金持ちだし)。

 あ、下妻一高は、一応県下公立高校第三位の進学校なので、昔からヤンキーと呼ばれる方々はおりません。

以下続く・・・かな?




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